
元海上保安官の「元海保」です!
今回のお話は「118番通報」についてのお話です!
皆さんは海で事故にあった時の「緊急番号」をご存じですか?
「海のもしもは118番!」

海に行く機会のある方はスマホに必ず登録してください!


ただ、海上保安庁の番号がわからなくても警察の「110」、消防の「119」などにかけてくれれば、連絡した場所から海上保安庁に通報が入りますので、危険な場合は咄嗟に出てくる番号にご連絡ください!!
海のもしもは118番

海上保安庁では毎日ではありませんが、緊張感が漂う海難事故が多く発生いたします。
海上保安庁だけではなく、消防の火災や救急事案、警察の事故や事件なども緊張感が漂っておりますが。。。
海の上で起こる事案は特殊なものが多く、船に関係するものが主な事案となっています。

例えばこのようなことが毎年必ず発生いたします。
ぶつかって真っ二つになっている
海に沈んでいる
故障して沖に流されている
転覆している
このようなことが発生しており、乗っていた船員の方は、船の中に閉じ込められているか、海に投げ出され漂流してしまうか、海に沈んでしまうかのいずれかになります。
船の中に閉じ込められている場合は救助することが出来て、生存の可能性があるのですが、海に投げ出され漂流、もしくは沈んでしまった場合の生存確率は極めて0に近いものとなります。
漂流場所が湾内付近であったり、近くに目標物がある、連絡手段があるなど特定の状況が揃っていると、生存確率はグッと上がりますので、海で仕事やレジャーを行うときには、ライフジャケットをしっかり着用し、防水スマホもしくは防水ケースに入れたスマホを肌見放さず持っていてください。
その行動が自分の命を救うことになります
長々注意喚起をしてしまいましたが、ここからは私が体験した海難事故の紹介をさせていただきます。

この海難は時間との勝負となり、かなりアドレナリンが爆発した海難対応でした。
118番通報

巡視船で潜水士をやっている頃の話です。
1週間の航海の中で、原発警戒や潜水訓練、潜水捜索などの業務を実施しておりました。
季節は冬が近づいてきており肌寒く、海は毎日うねうねうねうねしておりました。
1週間の業務が終了し、警戒海域から係留地に帰っているときのこと、まもなく係留地に到着というところで無線が入りました。

このタイミング!?
ワッチをしながら驚愕しておりましたが、事態は急を要するものとなりました。
我々がいる近くの海域、しかもうねりや波が高い岩場付近において、釣り船が故障し救助を求めているということでした。
すぐに巡視船を停止し、搭載艇を降ろすと共に、私を含む潜水士3名が乗り込み現場に急行しました。
搭載艇にて現場に向かう際、現場の状況や救助方法を話し合います。

故障して岩場に激突してしまえば、最悪転覆して船に乗っている人は海に投げ出されてしまいます。
しかも波が高い岩場は、岩場の中に吸い込まれて出てこれなくなる危険性もある為、転覆だけは阻止しないと死者がでる可能性が高まってしまいます。
救助活動開始


現場付近に到着すると、そこには岩場の方に流されていく釣り船が確認でき、急いで搭載艇にて向かおうとしたところ、暗岩が多くあり、搭載艇にて進むと2次被害が発生する恐れがある状況となりました。
暗岩とは水面までは出ていないけれど、水面ギリギリにある見えにくい岩のことであり、気づかずに接触すると、乗り上げたり、船底に穴が空いたりして超危険なものとなります。
かなり危険な状況であった為、潜水士3名全員で海に飛び込み急いで釣り船まで泳いで向かいました。
1人は曳航用のロープを持って泳ぎ、2人は猛ダッシュで釣り船に乗り込む。
釣り船に到着し船に乗り込むと、船長を含め釣り船のお客様は皆顔面蒼白となっており、中には泣きじゃくる人もいました。

そうなってしまうでしょう、この時点で岩場が目の前まで来ているのですから。
現状切羽詰まっている状況なので自己紹介などせずに、直ぐ様曳航用のロープを船に結び、搭載艇の支援班に曳航するように指示をしました。

揺れるので落ちないように掴まってください!
要救助者の皆様に指示し、直ぐに曳航が開始、間一髪のところで救助が無事に成功しました。
救助の際に自分の身がここまで危険に晒されることが、今回が初めてだったので、アドレナリンがバッキバキに出ている状態でした。
救助後

しばらく曳航して、波も落ちついた海域に到着、このまま係留地まで近いため、曳航を続行することになりました。
周りを見ると、皆様安堵というよりは恐怖で顔面蒼白状態が続いているようでした。

いやぁ、リアル海猿が伊藤英明みたいにカッコよくなくてすみません!
と場を和ませようとしたところ、緊張の糸が急に切れたらしく、お客様から拍手喝采で感謝の言葉をいただきました。
普段なら調子に乗って拍手に答え、一人一人握手でもしながらご挨拶でもしていましたが、ここは芸能人のディナーショーではなく、海難現場だということに、かろうじて気がつくことができ、なんとか敬礼だけで済ませた自分を褒めてあげたいです。
その後も場が和むよう会話を続け、係留地に到着。
陸上の職員に現状を引き継ぎその場を後にしました。
最後に

アドレナリンが出尽くしたのか、どっと疲れが出てきたのでそのまま家に帰ろうかと思いましたが、私物は全て巡視船に置いたまま。

濡れたウェットスーツに身を包み、入港してくる巡視船のもやい取りの為、寒空の下待っていたことを今でも覚えております。
このようなことが日々起きているわけではありませんが、海には危険がいっぱいですので、海で遊ぶときはしっかりとした準備をして安全に楽しみましょう!



必ずスマホだけは持っておいてください!!


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