
元海上保安官の「元海保」です!
今回のお話は「ヘリレスキュー」についてのお話です!
海上保安庁のレスキュー隊って、どんなものがあるかご存じでしょうか??

海保は潜水士は潜水士でも、所属によって名称が変わってきます。
・船に乗っているレスキュー隊
潜水班
・航空基地に配置されているレスキュー隊
機動救難隊
・羽田航空基地に配置されているレスキュー隊
特殊救難隊
となっております。
この3つはみんな潜水士で構成されているのですが、できることに違いがあるんです。

その話はまた今度詳しく説明いたします。
今回は機動救難士であった時のお話をさせていただきたいと思っております。
海上保安庁のヘリレスキュー

機動救難士はヘリ救助がメインのレスキュー隊となっており、ヘリに乗るということもあり、気圧の関係から海には深度20mまでしか潜ることができません。

潜る深度によってはヘリコプターで基地に帰れなくなるので、保安部に泊まったりします!
ということもあり、フェリーでの急患搬送や、海に取り残された人などを、救助機材を使ってヘリに吊り上げる救助などをしております。

危険を伴う仕事ですので、日々訓練を欠かさず行っております。
ヘリコプターで吊り上げ訓練


この日も要救助者吊り上げ訓練を行っていました。
囲いを作って障害物を設置し、隊員が要救助者をエバックハーネスという機材で吊り上げる訓練でした。
私が2番員といって、要救助者にエバックハーネスを取り付け、ヘリに吊り上がる訓練を行っているときのことでした。
救難士はヘリとつながっているロープやホイストケーブルを自分や要救助者に結着する時や、ケーブルを降ろしてほしいなど、ヘリに逐一合図を送り、連携して救助作業を行います。

ヘリとの連携が取れていないと救助できなくなるどころか、二次被害に発展してしまう恐れがあるからです。
この訓練時も逐一合図を出し、順調に進んでいきました。要救助者にエバックを装着後、ヘリのホイストケーブルと自分たちを結着し、ヘリに吊り上げてもらう時でした。

私はヘリに「結着」のハンドサインを送りました。
結着のハンドサインはヘリから見えるよう、自身の横から自身の前に大きく1回手を振るハンドサインとなっておりますが、今回のホイストマンは新人だったということもあってか、そのサインをホイスト巻き取りと勘違いしてしまいました。
手順とハンドサインを熟知していれば、結着のサインだと気が付くはずだし、もし巻き取りと勘違いしたとしても、結着のサインがなければ巻き取りはしない。
ただ、新人も緊張していたのか確認せずに巻き取りを開始。

しかもかなりのスピードで。
結着作業が終わっていたのが不幸中の幸いでしたが、急に吊り上げられ、障害物に激突し、くるくるディズニーランドのコーヒーカップのように回りながら吊り上げられていきました。
先輩の教え「言うは易く行うは難し」

後々のデブリーフィングでは、救難士のサインが悪いということになり、先輩からも、

「お前のサインがわかりづらいからミスをしたんだ!」
と責められました。
私は納得がいかなかったため、新人ホイストマン含む基地にいるホイストマン全員とサインの話をして、コミュニケーションをとりました。

分かりづらかったら無線をしよう!
という取り交わしもして、以後同じようなことが起きないよう対策をしました。
その数か月後、海難救助の要請が入り、フェリーからの急患搬送に先輩が向かいました。
何事もなく現場から戻り、撮影していた現場の状況を隊員全員で確認することに。

海難現場や訓練時は常に撮影をおこない、訓練に役立てています

隊員はゴープロ使ってるよ!

そこに衝撃的な映像が映っていました。
私のサインをボロカスに言った先輩のハンドサインは煩雑で、ベテランホイストマンも勘違いをし、ホイストの巻取りを開始。
運がよかったのは、ホイストマンがベテランであったため、巻取りがゆっくりであり、巻き取られていることに隊員が気づくことができたことでした。
先輩隊員はホイストを離脱し、再度結着のサインを送り事なきを得ていましたが、

サインへたくそやん!!
と思い先輩を睨みつけていましたが、先輩はホイストを離脱した自分の判断が凄い!と周囲にペラペラ自慢をしていました。

俺じゃなかったら大事故になってたね!


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