
元海上保安官の「元海保」です!
今回のお話は「機関科」についてのお話です!
海上保安庁を目指している皆さんは、どの科を希望しているでしょうか?
航海科?
機関科?
主計科?
通信科?
航空科?
海洋情報?
もしくはそんなに多くの科があるなんてご存じなかったでしょうか?
海保の主業務となる「科」については、海上保安庁の試験が合格して、内定を貰うときに決定しますので、皆さん「科」についてはよく調べて、しっかり検討してください!


過去記事にざっくりと記載してありますので、参考にどうぞ!
科によって業務内容がかなり変わってきてしまいますし、船長になりたいのに機関科で配属されたら、機関長になってしまいますから!

いけても業務管理官という謎の役職となってしまいますから!
(正直業務管理官のほうが業務的にかなり楽そうに見えましたが、、、)
海上保安庁に機関科で採用

ということで何を隠そう私は機関科でしたので、機関科の業務内容について少し深堀りさせていただこうと思います。

「科」に迷っている方がいらっしゃいましたら、是非参考にしていただけたらと思います。


まず機関科として海上保安庁に入庁して、海上保安学校に1年間お勉強をしに行くのですが、その中の授業内容が巡視船で使用している「内燃機関」のお勉強となります。
その他にも武道や警備、法律など様々な授業がありますが、メインは「内燃機関」となります。
海上保安学校


さて機関の具体的なお勉強内容は以下の通りです。
主機(メインエンジン)
補機(発電機や油水分離機など)
ボイラー
ポンプ関係(海水ポンプ、清水ポンプなど)
他にも色々ありますがこんなところでしょう。
上記の仕組みや点検方法、使用方法、整備方法などを1年かけてお勉強したり、練習船の「巡視船みうら」に乗船して、実際の機関に触れ、現場に出るまでに必要な機関の知識を身に着けていきます。
日頃の授業や実習にて、巡視船で使用している機関の知識と技術を身に着けると同時に、海上保安学校では「海技士」の資格試験を受験することになります。

海技士ってなんですか??

海技士は簡単に言ってしまうと、大きな船に乗るための免許証みたいなものです。
海上保安学校の機関科は「内燃機関四級」の筆記試験を受験します。
こちらは必ず合格するようにしましょう。合格しなくてもクビになったりはしませんが、現場に出た時にゴミ扱いされてしまいます。
しかも「海技士」を持っていない乗組員は正直に言いますと、

お荷物
となりますので、現場に出てから勉強して取るのは三級以上の資格にしてください。

お願いします。
資格試験を終えると海上保安学校の卒業時期になり、晴れて現場に出ることができます。
海上保安学校の規則正しい生活から、巡視船という毎日家に帰れない、夜中もワッチで寝られない(交代制)、休日も呼び出しがあるため遠出もできない
(遠出届を出せばいけますが、人数に限りがあります)
そんな世界へと足を踏み入れることになります。
巡視船業務

海上保安学校卒業間近に発表される巡視船に配属され、約1ヶ月から3ヶ月の船内居住生活がスタートします。
この期間は休みの日も巡視船に泊まり込み、巡視船の業務や機関科の業務を覚える期間となりますので、休みの日だからといって遊びに行くのではなく、機関科の当直職員にしっかりと機関について教えてもらいましょう。

休みなのに遊んじゃ駄目なんですか?

遊ぶのは駄目じゃないのですが、船内居住中にしっかりと当直業務や、緊急出港要領などを覚えないと、のちのち苦労しますので、ここは頑張りどころです!
巡視船での機関科業務については以下の通りです。
巡視船の出港時にエンジンを起動
各種バルブを開ける(発電機や使用する主機、補機の冷却用などなど)
発電機を起動して、陸上電源と船内電源を切り替える
ボイラーを起動し、主機の暖機
主機を起動
※巡視船のサイズによってはデッキ作業のお手伝いや、船橋にてバウスラスタなどの操作も加わります。
ワッチ中のエンジン点検
機関室の見回り
停泊や錨泊時のエンジン作業
簡単な整備作業
ボイラー起動や停止
お風呂掃除からお風呂のお湯はり
入港時のバウスラスタやデッキ作業
主機の停止
船内電源から陸上電源に切り替え
発電機の停止
各種バルブの閉鎖
バージ船を手配し巡視船に給油
エンジンルームの点検
機関の整備作業
エンジンルームの清掃
ざっくり機関科の業務内容を列挙いたしましたが、この中には警備業務があったり、取り締まり業務があったり、潜水士であれば潜水訓練などが含まれてきます。
エンジンの整備についても、ボイラーのマニホールド点検・清掃や、ポンプのこし器点検・清掃、発電機や主機の整備など様々であり、覚えることはたくさんあります。
正直船酔いがしやすく、油の匂いや騒音が苦手な方は機関科は辛いかもしれません。
エンジンルームは船底のほうで揺れにくくはなっていますが、船酔いの中エンジンルームの排気ガスや油の匂いを嗅ぐと、、、
うっぷ

思い出すと若干酔ってきました。
ただどの科でも覚えることが多いのは一緒ですし、大変なことは色々あります。
エンジンも最初は訳が分かりませんでしたが、覚えるうちにどんどん楽しくなっていき、長期整備やドッグの作業は毎日充実したものとなっておりましたので、整備後のビールは最高に美味しかったです!


(整備中は船が動かせないので呼び出しはありません)
機関科のメリット・デメリット


機関科のメリットはなにか?
ということを考えてはみたのですが、特にこれといったものが思い浮かびませんでした。
正直これは私の主観になってしまうものが多いので、特に参考にはならないと思います。
あえてメリットなのかな?と思うことがあるとすれば、
エンジン作業は面白い!
ということと、
トイレ掃除をしなくていい!

ということでしょうか。超しょうもなくてすみません!!
他にも真冬の寒いデッキ作業がないとか、整備中に炎天下の中、甲板で作業しなくていいとか、そんなことばかりが頭を過ってきてしまいます。
めちゃめちゃ揺れている中で包丁や熱湯を使用して料理を作らなくていいとかもありますが、めちゃめちゃ揺れている中でも料理を作ってくれる主計科って、ワンピースのサンジみたいでカッコいいですよね。

機関科のデメリットはなにか?
これは単純に船長になれないという答え一択です。
ただし、よく何をしているかわからない「業務管理官」という謎職に就くことができます。
これは船長になることのできない可哀そうな機関科の為に作られた、お飾り役職となっておりますので、もし機関科になって「業務管理官」まで上り詰めましたら、お飾りではなくしっかりと業務を管理してください!
(私があった業務管理官の中に、まともに仕事をしている人はいませんでした。もしかしたらどこかにはちゃんとした業務管理官がいるかもしれませんが、、、)
最後に

以上が私の経験した海上保安庁の機関科についてでした!

皆さんも少しは機関科に興味を持っていただけたでしょうか?
海上保安庁を目指している人の心の片隅に、機関科もいいなぁと思ってもらえたら幸いです!

是非機関科になって楽しいエンジンライフを送ってください!
コメント