
元海上保安官の「元海保」です!
今回のお話は「海保が嫌いな人達」についてのお話です!

この税金泥棒が!!
そんな暴言を当時は何度聞いたことでしょう。

暴言を聞いたときはいつもどこか遠くに行きたくなります。




巡視船の業務の中に「取締り」というものがあります。
それは何かと言いますと、警察が車のスピード違反や、免許証の確認をするのと同じように、海上保安官も船の免許証や、違反の取締りを行います。

この業務の時、色んな罵声を浴びることがあるんです。
海上保安庁が嫌いな人BEST3

船の免許制度は少し細かく、小型船舶操縦免許証の中にも1級から2級があったり、その中に水上バイクに乗るための「特殊」区分があったりと、かなりややこしや~な免許となっております。
また旅客だったり、釣り船だったり、なんだりしてしまったらステッカーを貼らなきゃいけないだの講習を受けるだの規定が多く存在します。

あれ?よく考えると車も同じか!

タクシーは2種面だし、準中型や中型、大型って別れてますね!

車検のシールも貼らなきゃいけないし、ほとんど一緒でした!
海保になりたての頃は取締りをする度精神的ストレスを感じ、取締りをすることが怖くなってしまう時もありました。
そもそもなんでそんなに海保が嫌いなのさ?
って話なんですが、私が現役時代に感じたBEST3がこちらとなります。
①態度の悪い海上保安官に取締りをされた経験がある人
②密漁を取締りしきれていないことに苛立ちを覚える漁師の方々
③湾内で波を立てる海保に苛立つ漁師や警戒船の方々
上記の方々に結構嫌われているなぁと現役時代は感じておりました。
おそらく嫌われる原因を作っているのは海保ですので、正直嫌われることも納得しております。
それでは詳しく体験談も踏まえて海保の嫌われっぷりをご紹介させていただきます。
取締りを拒否した男

今でも私の小さい脳に鮮明に記憶されている事件は、搭載艇にて航行中の船舶に取締りを行ったときのことでした。

その日は蒼く澄んだ空、calm状態の海での出来事。
航行する船舶も少なく、取締りの船舶を探していたところ、プレジャーボートがプカプカ浮いているのを発見、漂泊しながらのんびり過ごしているようでした。


近くに目立った船舶もなかったことから、プレジャーボートに接近し声をかけてみることにしました。

こんにちは~海上保安庁です~
明るく低姿勢で声をかけたところ、プレジャーボートの船長が顔を真っ赤にしていきなり怒鳴り散らかしてきました。
あぁ!?
海保が何の用だ!!
なんもしてねぇだろ!!
邪魔すんなよ!!
消えろ!!

なんかめちゃくちゃ怒っている。

なんでそんなに怒っているのだろう?
もしかして違反してる?免許証持ってない?法定備品積んでいない?
なんか怪しい雰囲気を感じましたが、なんとなくただ海上保安庁が嫌いなだけかもしれない気もしていました。

そんなこと言わないで免許とか確認するだけですから~

あぁ!?そんなに確認したきゃ勝手に見ろよ!!
そういうと船長はおもむろに免許証と法定備品を海に投げ捨て始めました。

ちょっと船長、そんなことしたら海防法違反になってしまいますよ?
見たところ免許もあるし、法定備品だって揃っているのに、何でそんなことしちゃうの??
ちがうちがう、そうじゃな~い、誰も拾わない~~
と有名なあの曲のサビの部分のように船長に伝え、一度落ち着くように説得すると、流石に免許証がなくなったらヤバいと思ったのか、プレジャーボートから網を持ってきて自分で回収をし始めました。
なんでそんなことしたのかを聞いてみると、以前も取締りを受けたらしく、色々船内を物色され、嫌な思いをしたとのことでした。
そんなことがあったせいで海上保安庁が嫌いになり、今日もその時のことがフラッシュバックしてしまい、ついカッとなってしまったと話してくれました。
確かにそんな嫌な思いをしたら海保が嫌いになるんだろうなと思い、その海上保安官に代わり謝罪をいたしました。

免許も法定備品も問題ないので、これからも安全に船舶ライフを楽しんでください!

そしてなにかあったら118番通報して我々に救助を求めてください!
と伝えると、少しだけ海保のイメージが良くなったが、まだ好きではない。
と少し海保に対する気持ちに変化があったことが嬉しい出来事でした。
密漁に憤りを感じる漁師

あれは湾内の漁船に対して安全指導兼取締りを行っているときのこと、ある漁船で漁具の整備を行っている船長らしき男性に声をかけた時の話です。
男性に挨拶をし、免許証の確認などの協力をお願いすると、
無視、ひたすら無視
私たちがそこにいないどころか、この世に存在していないんじゃないかと思うほど
無視、ただただ無視
それでもひたすら嫌がらせのごとく話しかける上司の山田さん(仮名)流石にしつこすぎて無視しきれなくなった船長は免許証や備品、無線関係の免許などをこちらに投げつけてきました。

なんで海保嫌いな人は書類を投げてくるのでしょう?

ありがとうございます~、確認させていただきますね~
そういって書類を確認していると、船長らしき男性が初めて口を開きました。
俺たちみたいに海でまっとうに仕事している奴らを取り締まるんじゃなくて、密漁してるチンピラとか、レジャー気分でアワビとかウニ盗っていっているレジャー客を捕まえろよ!!
俺たちがいくら損していると思ってるんだよ!!
どれだけ苦労していると思ってるんだよ!!
確かにそうだと思いました。
漁師の方々は海でちゃんとまっとうに仕事をしている。
そんな人を捕まえるより、ヤクザの下っ端がボンベ背負って密漁している案件を多く取り締まりたい。
レジャー客が軽はずみにアワビやウニなどを盗っていくのを防ぎたい。
その思いはみんな一緒なんですが、仕事とはいえ漁師の方々も違反していいというわけではありません。
どちらもしっかり確認して事故や事件を未然に防ぐことも海上保安官の仕事なんです。

例え海で仕事する方々に嫌われることになったとしても。
湾内で働く怒れる船長

船に乗ったことがない方はあまり想像ができないかもしれませんが、船が海を走ると波が立ち、近くの係留している船や桟橋、養殖場などは大きく揺れてしまうんです。
船舶が多く係留してあるところを係留地と呼ぶのですが、そこに海上保安庁の船も係留してあります。
湾内には何かしら作業している船や、その船を警戒している小型の船もいます。
また、みんなが大好き海苔の養殖場なども湾の近くにあったりする場所もあります。

そんな穏やかな状況でありたい湾内をかき乱す存在がいます。

そう海上保安庁の巡視船です。
海保の巡視船はなにか事案があったりすると、緊急で出港していきます。
一応周りに気を配ってはいるのですが、どうしてもウォータージェットの高速船だったり、CL巡視艇などになってしまうと、波を立ててしまうことが多く発生してしまいます。
巡視船が波を立てる度に警戒船の船長はこちらを怒鳴りつけ、海苔の養殖業の方々からもお叱りを受けます。
(直接文句を言われることも多々ありました)
こちらも業務ではあるのですが、湾内くらいはゆっくり行けや!!
っていう皆様の気持ちも痛いほど伝わってきておりますので、お互いなんとか歩み寄れたらいいなぁと思いつつ、現場にいるときは歩み寄れなかった痛い記憶となっております。


最後に

このように海上保安庁を嫌いな方も多く存在していることが事実であり、原因を作っているのもまた海上保安庁であることがわかります。
お互いの仕事について理解を深め、いつか協力し合えるようになったら最高だなと思っている今日この頃。

私の場合、好きになった女性の父親が漁師で、猛アタックにアタックを続け、休みの日は遠出届を出して新幹線で会いに行ってもいましたが、結局父親の海保嫌いに打ち勝つことができず、

お父さんが海保嫌いだから、あなたとは付き合えない
の一言をもらい、フラれることとなりました。
今となっては海保を辞めて一般人をしておりますが、あの頃はバリバリの海上保安官だったので、どうしようもなかった私の恋しさとせつなさと心強さの体験でした。


皆さんのお仕事の中にも、誰かに嫌われてしまう仕事もあることでしょう。
ただ誰かに嫌われるからといって自分の仕事を卑下しないでください。
その仕事の先で誰かを幸せにできているということ忘れないでください。
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