めちゃめちゃ忙しい海上保安庁の解役作業!古い船のままでよかった!

引越 海保の体験談
引用元:フォトAC

「解役」とはなにか?

巡視船が老朽化などで新造船に配置換えする際に、

「いままでありがとう!お疲れさまでした!」

と言って巡視船という任務から外されることを言います。

海上保安庁の解役作業

船子
船子

「解役」となった巡視船はどうなるんですか?

元海保
元海保

そうですね。そのまま廃船になったり、他の国に売却されたりとパターンがあります。

私の乗っていた巡視船は外国に売却され、漁船なのかよくわかりませんが、どこかの国にて現役続行しているとのことです。

(現在は不明)

船子
船子

ちなみに解役後はすぐに新造船に乗れるんですか?

元海保
元海保

私の場合は新造船がある程度完成するまで「予備員」として陸上勤務で雑用をしていました。その後「ドック」に行って新造船を受け取って戻ってきましたね!

船子
船子

じゃあプチ旅行ができたんですね!

元海保
元海保

はい数日間だけですが、「ドック」を楽しむことができました!

解役の作業について

船子
船子

質問なんですが「解役」って何かすることあるんですか?

元海保
元海保

実はいっぱいすることがあるんですよね。。。

船子
船子

例えばどんなことですか?

元海保
元海保

「荷物運び」です。

そう「解役」でもっとも大変なのは荷物運びなんです。

解役する巡視船にある備品や消耗品をリスト化し、すべて倉庫に持っていったり、ほかの巡視船に預かってもらったりととにかく大変!

船子
船子

「棚卸し」みたいなものですか?

元海保
元海保

そうですね、棚卸し+引っ越しという感じですね。

解役の話が巡視船の乗組員に伝えられ、巡視船が海外に売却されるまでの間に引っ越し作業を行わなければなりません。

しかし、その間も海の警戒業務などもありますので、業務の間に荷物をまとめ、必要最低限を残し、陸に戻ってきたときに荷物を運び出します。

通常の業務にプラスされてのこの作業は中々大変なのと同時に、船酔いする私にとっては拷問といっても過言ではありませんでした。

しかも引っ越し作業して思うことは、この船こんなに物があったの!?ってことです。

絶対必要ないでしょ!?みたいな消耗品から、誰が置いていったのか、自転車の部品やらなんやら。。。

なんでこんなもんまで片付けなあかんねん!!みたいな気持ちでした。

船子
船子

大変だったんですねぇ

業務も終わり陸電も外される

巡視船としての最後の航海も終わり、解役まで放置されることになった巡視船。

陸電ケーブルも外されたことから、船内での引っ越し作業は暗く、寒い。

冬場だったことから発電機を起動して船内電源を入れてほしいと頼まれ、機関科職員で発電機を起動することになりました。

元海保
元海保

冬場で数日放置していたのが悔やまれた出来事でした。

船子
船子

何かあったんですか?

陸電ケーブルが外され、電源が供給されていないということは、コンプレッサーも動いていない状況であり、発電機を起動するには「燃料」と「圧縮空気」が必要でした。

幸い「燃料」は十分にあったのですが、「圧縮空気」は発電機を1回起動する分しか残ってはおりませんでした。

元海保
元海保

嫌な予感がする。

そう思いましたが、機関科職員で暖機もできない発電機を必死に起動しようと試みましたが、結局起動できず。

しかし、機関科の意地を見せるぞ!ということで私たちはマンパワーを全開にすることを決意したのです!!

機関科の意地とプライド

発電機を起動するために必要な「圧縮空気」をどうにか充填しなければならない。

しかし電力が供給されていないのでコンプレッサーを使うことができない。

それならば緊急用の「手動」にて充填すればいいではないでしょうか!?タンクに手動圧縮用の棒をぶっこみ、左右にゆらゆら棒を振ります。

元海保
元海保

せい!せい!すぇぇぇい!!

シャーク先輩
シャーク先輩

2回分は溜めるぞ!!気合い入れろ!!

元海保
元海保

はい!!せい!せい!

数時間経過

何とか一回分は溜めることが出来ましたが、1回分だと起動できないことが先ほど証明されてしまったので、2回分はほしいところですが、本日の業務はこれにて終了ということで、明日再度溜めることにしました。

絶望、そして覚醒

翌日、早朝から航海科や主計科の期待を胸にいざ機関室に向かうと、そこには信じられない光景がありました。

シャーク先輩
シャーク先輩

タンクが空になってやがる!?

dkhどsjほdf」ld!?

ママぁぁぁぁぁ!!!

タンクがエア漏れを起こしてやがったんです。

昨日一生懸命溜めた空気は空に舞い上がってしまっておりました。

シャーク先輩
シャーク先輩

、、、もう諦めよう。

元海保
元海保

いや!俺一人でも溜めてやるよ!午前中でやってやるよ!!

そう言うと私は一人で棒をふりふりし、気が付けば2回分の「圧縮空気」を溜めることに成功しました。

今思うと、あれが「無我の境地」だったと思います。

全身がズタボロになり、立つこともできなくなった私を見た機関科の職員が、涙を流しながらこう言いました。

シャーク先輩
シャーク先輩

お前の圧縮空気は無駄にはしないぜ!

同期
同期

見てろよ!今度は動かしてみせる!!

機関科職員の意地とプライドをかけて発電機を起動!

1回目は案の定失敗!

でもこれで準備は整った!

2回目の起動に全てを懸ける!!

ずぅぅぅぅん!!

、、、失敗、起動せず。

機関科職員(私を含む)はこの後船には一度も顔を出すことがありませんでした。

船子
船子

フィクションですか?ノンフィクションですか?

元海保
元海保

ノンフィクションです。

最後に

そんな発電機事件から数日後、とうとう巡視船の解役式となりました。

巡視船の名前を消し、偉い人たちの挨拶。

全員集合の記念写真。

そしてえい航されていなくなった巡視船。

あっという間に終わってしまったという感じでした。

船子
船子

寂しかったですか?

元海保
元海保

新造船で頭がいっぱいでした。

その後、しばらく陸上で予備員をしたのち、新造船を造船しているドックにいき、ウォータージェットの巡視船を見てわいわいしておりましたが、その後船酔いはするわ、搭載艇で拷問を受けるわで、大変な目に合うなんてこの時は想像もしておりませんでした。

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