
皆さん!元海上保安官の「元海保」です!
今回のお話は「海保と消防の連携」についてのお話になります!
皆さん知っていましたか?消防士と海上保安官はよくコラボレーションすることがあるんです。

え?海保は海ですよね?いつコラボするんですか?

そうですね、いろんな場面があるんですが、何個かご紹介しますね!
海保と消防のコラボ


海保と消防が現場でコラボするときはこんな時です!
・海で救助した要救助者を消防の救急車に引き継いで病院へ搬送
・車両転落など比較的陸地は消防のダイバーと協力して車両捜索、要救助者の捜索

主に上記の2つのパターンが多いかと思います!
正直車両転落などの初動に関しては消防ダイバーのほうが早く到着することも多く、現場でよく一緒に潜る機会がありました。
他にも消防の救急車に配乗されるために実施される、救急の研修に参加させていただく機会もあり、約3か月ほど衣食住をともにしたこともあります。

その時本当に驚いたのは、彼らの料理のセンスでした。
あんなに皆さん日中はお勉強と実技に励んで、毎日テスト三昧だったのに、夜になると集まり鍋をやったり、肉を焼いたり、ラーメンを作ったりなど、夕食食べたのにまだ食べます?!
っていうくらい食べておりました。
研修中は呼び出しもないことからなのか、皆タガが外れていました。

なにが一番美味しかったですか??

一番美味しかったのは、焼いた肉でした!
海保と消防の合同訓練

そんないっぱいコラボさせていただいている消防士さんとのコラボの中で、私が体験した衝撃と感動の実話を今回はお届けさせていただきます。

私が国際緊急援助隊(JDR)の訓練に参加しているときのことでした。
たまたま訓練に参加していた消防の方が管区内の消防の方で、しかもめちゃめちゃご近所さんということもあり意気投合し、訓練後も交流を持つようになりました。
その方のお誘いで消防の災害救助訓練に参加させていただいたり、救急車に同乗させていただき、実働に参加させていただいたりと、かなり貴重な体験をさせていただくことができました。

消防さんの救助技術はレベルが高く、勉強させていただきました!
その当時はかなり消防との連携もよくなり、車両転落や救急搬送の際もスムーズに連携が取ることができていました。
そんなある日、消防の方から連絡が入り、話を聞いてみると消防のダイバーチーム班長になったので、海保の潜水士と訓練して技術を教えてほしいとのことでした。

いつもお世話になっていたので是非協力させてください!
と合同訓練が決定したのでした。
訓練の内容は車両転落を想定し、巡視船の係留している岸壁にて訓練を行うことにしました。
この場所はかなり視界が悪く、少しでも海底に衝撃を与えようものならヘドロが舞い散り、ブラックアウトします。
この訓練で重要なのは、しっかり水中で体制を維持すること、視界の悪い中での捜索技術、潜水士同士の連携となります。

果たして初めて一緒に潜るチームの運命はいかに!!
敵意むき出しの消防

訓練当日、巡視船の留まる岸壁にて訓練準備をしていると、消防の潜水班が到着しました。
挨拶に来てくれた潜水班長以外はなぜか敵意むき出しの状態となっておりました。

みんな目が怖いんですけど?
潜水班長に話を聞いてみると、潜水班の皆さんは消防歴が長く、ベテラン揃い。
潜水についても何年もやっているみたいで、

「なんで俺らが教わらなきゃいけないんだ?」
みたいなオーラがむんむんしておりました。極めつけは、

君は若そうだけど、潜水何年目?
みたいな質問をされ、

潜水士になってから3年ですね。
と答えると、

俺5年だから。
みたいな感じで鼻で笑われてしまいました。

なんだこの雰囲気。
いつも現場でそんな感じだったっけ?
まぁしょうがない。訓練で見せつけてあげましょう!
実力の差というものを!

「潜水歴の差が潜水能力の決定的差ではないということを教えてやる」
そんなどこかの偉人の名セリフをパクって訓練ミーティングを実施。
合同訓練開始


訓練内容は以下の通りになります!
①車両転落発生→現場到着
②目撃者に転落位置の確認
③臨時潜水班長が捜索方法を決定
④捜索
⑤車両内の要救助者を岸壁に吊り上げる
⑥心肺蘇生→病院搬送→訓練終了
潜水班長は消防ダイバーにお願いし、海保の潜水士(私を含む2名)はとりあえず指示に従うことにした。
現場に到着し、位置の確認ができたところで、消防ダイバーが捜索方法を提案

岸壁から近いので、岸壁沿いに平行捜索を実施しましょう

(まぁ問題ないかな)

1番員、2番員は海保の方お願いしていいですか?

え?それじゃ訓練になりませんよ?

・・・確かに。じゃあ中番お願いします。

この場所はヘドロまくと視界が無くなりますので、1番と2番は絶対にまかないように索を張ってくださいね
これはお笑いでいうフリではなく、ガチのお願いでした。
ヘドロをまくと視界が戻るのに時間がかかるし、おそらくまいたら2番は索を張れないと思いました。

それくらいわかってますよ!
しかし、嫌な予感は的中し、現実となってしまいました。
3番員で潜ってみると、そこはヘドロの世界。
1番員は私と目も合わせてくれない。
そして何より、2番員は索を張れていないで、方位も間違っていました。

これは、、、ヤバいぞ
とりあえず2番員のところに向かい、索の張る方向を指示しますが、思ったより視界がなくなってテンパっているのか、足でヘドロをまき、頭は海面方向。
おそらく上下左右がわからなくなってしまっている状況となっておりました。
これは捜索にならないと思い、一度海面に浮上し、視界が戻るまでの時間、潜降方法を見直すことにしました。
ライトが世界を救う

一旦訓練を仕切りなおし、訓練を再開。

海面で索を張った状態で潜り、そのまま捜索しましょう。
いつの間にやら私が班長みたいになり、潜水訓練を再開することになりました。
しかし、どうしてもヘドロをまいてしまったり、浮上してしまったり、ラジバンダリ。
ちょっと訓練にならないと判断したので、一度訓練を中断することにしました。
すると、一人の消防ダイバーがかなり動揺し、海面をパチャパチャしていました。

どうしたんですかパチャパチャして?

超高性能&超高額の水中ライトを落としました。
失くしたら始末書だ!!
そんなことを言いながら騒いでいるので、海保の潜水士でお手本ではないですが、捜索して見つけてきます。
といって潜水開始を開始しました。
捜索開始から約1分。
速攻でライトを見つけ、ライトを掲げながらウルトラマンの登場シーンのように浮上すると、消防士のダイバーの方々、巡視船の支援班がスタンディングオベーションして私たちを迎えてくれました。

やっぱり海保の潜水士さんにはかないませんわぁ!
掌が返ったかのような大絶賛。
しかし、このライト事件のおかげで殺伐とした空気がなくなり、潜水の方法などが話しやすくなり、訓練も無事に終了。
訓練後の飲み会も大盛り上がりで、かなり連携が深まった良い出来事でした。
最後に

その後も定期的に潜水訓練を合同で行ったり、消防の合同訓練に参加したりと、連携も深まり事案の際に消防との連携もスムーズになったりと、本当に良い環境になっていきました。
やはり官庁の垣根を越えて、色々な訓練を実施することによって知識も深まり、人とのつながりが広がっていくのだなぁと思った良い経験の一つとなりました。

これからも消防と海保が良い連携をして、要救助者を救助していってもらいたいと思っています。
海上保安庁も面白い職場ですが、消防もとてもやりがいのあるレベルの高い救難技術を持っておりますので、興味のある方は受験してみましょう!


コメント