海上保安庁では巡視船の他ヘリコプターなどの航空機も所有しております。

そして、潜水士になると海の中に潜る他、ヘリコプターからの降下や吊り上げ救助も行うことになります。

潜水士は「ホイスト降下」にてヘリコプターから降下します!
そんなヘリコプターからの降下ですが、基本は潜水士になってから初めて行うことになりますが、PLHの巡視船に所属している海上保安官が「降下員」という役職を兼任することがあり、潜水士でない海上保安官もヘリコプターから降下することがあります。

基本降下訓練は行いますが、実働に参加することはほぼありません!
私は降下員が参加した実働は聞いたことがありません!
ということで今回は私が潜水士になった時に、初めて降下訓練を行ったときのお話をさせていただきたいと思います。
ヘリコプターからの降下訓練
潜水士に配属されると、大体は潜水訓練やレンジャー訓練を実施しているのですが、数か月に1回はヘリコプターからの降下・吊り上げ救助訓練、通称「HR訓練」を実施します。
潜水士がヘリコプターからの降下訓練をする前に、いくつか段階がありますのでご紹介いたします。
ヘリコプターからの降下訓練
・訓練塔(機動救難士の施設または消防の施設)にて降下訓練
※しない場合もあります。
・船内で降下訓練、ヘリ降下のイメトレ実施
・着陸しているヘリコプターを使用して降下・吊り上げ訓練
・実際に離陸したヘリコプターから降下・吊り上げ訓練

このような流れで訓練を実施し、陸上で問題ないようであればヘリコプターからの降下訓練が許可されます。
まぁ、大体みんな問題なくヘリ訓練に移行します。
楽しすぎた訓練塔での降下訓練
私が潜水士になったころは、近くに機動救難基地がまだなかった頃で、消防の訓練塔を借りて降下訓練を行いました。
潜水研修では「潜水訓練」しかしないので、降下訓練に関しては訓練塔の訓練が初めてでした。
船内である程度予習を行ってきたので、使用する機材や、降下方法に関しては問題ありませんでしたが、実際に訓練塔の降下場所に立ってみると、、、

思ったより高いな、、、
なんて思いましたが、特に恐怖心はありませんでした。

おい!ビビってんじゃないぞ!?ぱーっと降下しろよ!
そういうと先輩が手本を見せてくれました。
楽しそうに降下していき見事着地!降下ロープを整え、次の降下者の準備をします。
いざ私の番になり、人生で初めて高いところから降下を実施しました。

ひゃあああああ!!!
(なんて楽しいんだ!!!)
あまりにも楽しすぎて、訓練塔の最上階までダッシュで駆け上がり、何度も何度も時間いっぱい降下させていただきました。

なかなかやるじゃねえか!
ヘリコプターのホイスト訓練
訓練塔での降下訓練も終わり、高所から降下する感覚を身に着け、今度は実際のヘリコプターを使用して訓練を実施することになります。
今回の訓練は着陸している状態で、ホイスト降下訓練と、救助機材にて吊り上げ救助を実施することになりました。
この時率直に思ったことがあります。

ホイスト遅すぎてつまんないな。
そうなんです。ホイスト降下は遅いのでスリルが足りないんです!
実働でスリルなんて求めてはいけないのですが、実際訓練塔の訓練で、スピードを自分でコントロールできた時のほうが楽しかったのです。

このことがきっかけで機動救難士になったのかもしれません。
(人が少なかったからお呼びがかかったのもありますが、、、)
ホイスト訓練も無事に終わり、次はお空に飛んでの訓練となりますが、まさかあんな嫌がらせをされるとは、この時は夢にも思っていませんでした。。。
降下ポイントが直前で変更される
初めてヘリコプターを空に飛ばして行う訓練は、PL巡視船の飛行甲板での訓練となりました。
訓練内容はこんな感じです。
HR訓練内容
・ヘリコプター離船(潜水士2名同乗)
・飛行甲板に1番員、2番員降下
・飛行甲板にて2番員がエバックハーネスという救助機材で要救助者(潜水士)を吊り上げ救助
・飛行甲板にいる別の潜水士と1番員が交代して吊り上げ
・上記を時間まで繰り返す(2回目以降は3番員まで降下)
1番員は「ガイドロープ」という2番員を降下ポイントにガイドするロープを保持して降下したり、ホイストを管理したりと色々やることがあるのですが、詳しい話はまた今度お話いたします!
私は最初2番員で降下し、要救助者を救助して、2回目の降下は1番員で降下する段取りとなっておりました。
初めての降下訓練で緊張はしておりましたが、ホイスト降下に恐怖心はなかったので、程よい緊張感でした。
いざ1回目の降下・吊り上げ救助訓練が開始されましたが、特に問題なく救助完了。無事に吊り上げ救助も完了しました。

なんだか拍子抜けだな。
難しいこともないし、次の1番員も余裕だな。
そう思いながらガイドロープを整えていると、無線でこんな連絡が入ってきました。

降下ポイントを変更する。
降下ポイント「船首部ボラード」
ボラード以外のところは海面だと思って降下してください。

了解。
1番員大丈夫(笑)
こいつら、、、急に訓練内容変えやがって!内心そんな感情でいっぱいでしたが、沸々と怒りが込みあがってきました。

やってやろうじゃないか!!
新人だからってなめるなよ!!
っていうかホイストマンの腕にもよるだろ!!
ビビるなんて思うなよな!!
という気持ちのもと見事にボラードに降下成功!
その後の訓練も問題なくクリアし訓練が終了。
訓練後のデブリーフィングでは若干悔しそうにしている潜水班長とパイロット。

お前らグルだったのか!?
そんな新人への洗礼を降下訓練で受けたお話でした。
最後に
いかがでしたでしょうか?おそらく潜水士だけではなく、何かと新人海上保安官は色々な洗礼が待っていると思います。
潜水士はホイスト降下なんでこんなものでしたが、機動救難士になると「リぺリング降下」といって、自分自身で降下ポイントめがけて降下して、ブレーキも自分でかけなければならないというスリリングな降下をすることになります。
そんな機動救難士の新人も色々な洗礼が待っております。

その話はまた今度。。。
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