いつの時代も手漕ぎボートでどこかを横断したがる人っていますよね。
日本の某アナウンサーも、ちょっと前に横断成功!って盛り上がっていましたが、一度遭難して救助されておりました。

自衛隊が救助しておりましたが、海上保安庁の巡視船も現場におりました。
そんな危険な手漕ぎボートですが、今回は出港して1日で救助要請をしてきた「お騒がせな外国人」のお話をさせていただきたいと思います。

Twitterで盛り上がったから記事にしてみました
海上保安庁24時!手漕ぎボートからSOS!
海が荒れる冬の日。
この時期は航行不能になる船であったり、釣り人がテトラポットから海に落ちたりと、色々な海難が発生する時期となります。

皆さんも冬の海は危険ですので、遊び半分で近づかないようにしましょう!
そんな忙しい時期に、私は巡視船の機関科兼潜水士として業務に励んでおりました。
冬の荒れる海ではベテランも船酔いし、船体も10度、15度と傾いて、寝ている顔面に漫画が突撃してきます。
船酔いで限界を迎える乗組員の中には、船底に近いところに位置している、機関管理室の床にへばりつく強者も現れます。
荒波に揉まれながら業務をしていると、船橋の無線に通信が入りました。

うわぁ、海難かぁ。
嫌な予感は見事的中、手漕ぎボートから救助要請があり、近くにいる私たちが救助しに行くことになりました。
1日でリタイアした手漕ぎボート
救助に向かう際、通信科に要救助者の情報が送られてきたので確認すると、操船者は外国人であり、出港して1日でリタイアしたとのことでした。

はやいよぉ、はやすぎるよぉ~!
確かに早い。
いや、早すぎる。
そして何故この海が荒れる時期に横断しようとしたのか?
そのチャレンジ精神は凄いと思いますが、結果は明白ではなかったのでしょうか??
しかし、日本国内で起きた出来事ですので、海上保安庁が救助しに行かなければなりません。

船が転覆したら危険なので、早く救助しなければ!!
要救助者が海に転落する恐れがあるため、潜水士は機材を準備し、救助の準備を万全にして現場海域へ急行しました。
笑顔で救助される要救助者
荒れる海の中、全速力で現場に向かい、全力で船酔いしながら辿り着いた現場海域に、なんとか転覆せず海の上に浮いている手漕ぎボートを発見しました。

よかった!転覆はしてないみたいだ!
搭載艇を降ろして救助しに行こう!
搭載艇に乗り移る際に、海に落ちる危険性もあるため、私を含め潜水士2名を乗せて救助に向かいました。
手漕ぎボートの近くまで搭載艇で近づくと、満面の笑みでこちらに手を振る外国人男性の姿がありました。

あれ?元気だぞ?
情報によれば、荒れた海で体力の限界が来たって話だったけど、、、
そんな疑問が頭を過りましたが、手漕ぎボートに接近し、無事救助することに成功!要救助者を巡視船に連れて行こうとした時、外国人男性が英語で何かを訴えてきました。

don’t leave the boat
don’t break

船を置いていかないで、壊さないで!っていっているな。

先輩!英語分かるんですか!?
意外です!!

そんなやりとりもありつつ、なるべく傷つけないよう善処しますと伝え、一旦巡視船に戻りました。
手漕ぎボートの曳航でゲロ酔い
要救助者を巡視船内に移動させ、潜水士と支援班にて曳航作業を開始しました。

手漕ぎボートが壊れないように曳航しなきゃならないな。
陸地まで距離があるため、搭載艇で曳航するのは現実的ではなく、潜水班のロープを駆使して曳航ロープを作成し、巡視船と繋ぐことにしました。
この作業の時、とんでもないくらい手漕ぎボートが揺れる中の作業の為、私はゲロ酔いしておりました。

やばい、早く船に戻るか海に飛び込みたい!!
そんな瀕死の状態ではありましたが、なんとか曳航作業が終わり、無事曳航が開始されました。
私は巡視船に戻ってすぐ、愛しのトイレに会いに行き、高まった感情を全力でトイレにぶつけに行きました。
そんな私を愛しのトイレは暖かく受け止めてくれ、私は幸せな気持ちになりました。
パンをください
なんとか気持ちも落ち着き、要救助者の様子を見に行った時のことでした。
公室で主計科の人と要救助者が話をしておりました。

I want bread without rice
If possible, I want to eat wieners and scrambled eggs

シャーク、なんて言ってるの?

米はいらないからパンが食べたい。
あとウインナーとスクランブルエッグが食べたい。
だそうです。。。
ここは「アパ巡視船」か!?
なんて注文の多い要救助者なんだ!
そう思っていると、主計科の方がご要望のメニューをさっと調理し持ってくると、満足げな顔をしてナイフとフォークで召し上がっておりました。
最後に
手漕ぎボートであの荒波を超えていくのは流石に厳しく、救助要請する気持ちは分からなくもないです。
もしこの記事を読んでいる方の中に、手漕ぎボートで横断を考えている人がいましたら、時期を考えて行動してください。

最悪転覆したりして命の危険もあります!
ボートに乗ってみたい人は「レジャー」で楽しんでください!

外国人の方に怒り心頭に発した方も多いかと思いますが、結構前の話ですので勘弁してあげてください。

さて、明日の朝食はパンとウインナー、それにスクランブルエッグで決まりだな!
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